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温暖化解決の根拠のはずが…揺らぐIPCCレポートの信用性(産経新聞)

 地球温暖化問題で、科学的根拠として引用されるのが国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の報告書だ。ポスト京都議定書の国際交渉や鳩山政権の温室効果ガス排出量25%削減目標などに影響を与えてきた。しかし、メール流出騒動に始まり、報告書に記述の誤りが見つかったことから、IPCC報告書自体の権威に疑義を唱える声が上がっている。IPCCはついに、第3者的立場の学術機関にその検証を委託した。その背景は−。

 ■やっと決まった検証委員会メンバー

 5月3日。IPCCと国連の要請を受け、国際的学術組織「インターアカデミーカウンシル(IAC)」はIPCCの報告書を検証する12人の委員の名前を発表した。4月初めには決まるはずだったが1カ月近く遅れてしまった。委員人選で、検証の過程に疑いがはさまれないよう「公正中立」に配慮し、遅れたのは想像に難くない。

 IACは委員を決めるにあたって、(1)地域に偏りがない(2)ノーベル賞級の学者であることが望ましい(3)IPCCの報告書作成にかかわっていない−ことなどに配慮して、国際学術・工学団体から推薦者を募ったという。

 決まった12人の国籍を見てみると、その苦心のほどがうかがわれる。

 委員長は経済学者で米・プリンストン大、ミシガン大の元学長であり、米国科学アカデミーの委員会議長を務めたシャピロ氏。副委員長は南アフリカ科学アカデミーの執行役員、ディアピ氏。

 出身地を見てみるとブラジル、米国、中国、オランダ、インド、メキシコ、英国、ドイツ、マレーシア。日本からも1人、気象学者の真鍋淑郎氏が入っていた。「世界中から推薦者が寄せられるため、日本人が選ばれないこともありうる」(関係者)ことから、IPCCへの貢献を自負している日本にとってはとりあえず一安心というところか。

 真鍋氏は78歳。東京大学理学部卒業後、渡米し米国海洋大気庁(NOAA)に入庁。プリンストン大上級気象学者で活躍の基盤は米国となっている。

 この人選について、国立環境研・温暖化リスク評価研究室長の江守正多氏は「温暖化予測の基礎を作った人。先人の立場でアドバイスしてもらえるのではないか」と評価する。

 ■クライメットゲート事件

 そもそも、IPCC報告書の何が問題だったのか。

 温暖化問題に疑問を呈する懐疑派と呼ばれる人たちは以前からいたが、ここまで問題が大きくなった背景には、ある“事件”が要因として横たわっている。

 昨年11月、気象の世界で権威である英・イーストアングリア大学のホストコンピューターがハッキングされ、気候研究ユニットのメールが大量に流出した。その中に第3次報告書の気温上昇カーブのデータについて「トリック(ごまかし)を終えた」といった記述があったのだ。情報操作がうかがわれたため、ニクソン米大統領辞任のきっかけとなった「ウォーターゲート事件」になぞらえ、「クライメット(気候)ゲート事件」として、温暖化問題懐疑派たちの集中砲火を浴びることになった。

 その後浮上したのが、第4次報告書のヒマラヤの氷河問題。「ヒマラヤの氷河が2035年までに消える」とあったが、「2350年に5分の1に縮小」の誤りだったことが後に判明した。オランダの海面下の国土の割合についても報告書は55%となっていたが実際は26%。これも、誤りであることがわかった。

 昨年12月、コペンハーゲンで開かれた気候変動枠組み条約会議第15回締約国会議(COP15)で、IPCCのパチャウリ議長は産経新聞の取材に、「膨大な報告書の中で一部誤りがあったことは反省すべきであり、恥ずべきことではあるが、報告書自体の信頼性を揺るがすものではなかった」と断言。

 さらに、「なぜこうしたことが起こったかきちんと検証したい。ただ、誰に依頼して、どのように検証するか非常に難しい問題だ」と話していた。

 ■困難を伴う検証作業

 検証が難しいのには、IPCCの報告書の特殊性がある。

 干魃(かんばつ)や暖冬といった世界的な異常気象を背景に、国連環境計画(UNEP)と国連の専門機関である世界気象機関(WMO)が、気候と温暖化の現状や将来予測に関する最新の知見の評価を得るためにスタートした。

 1990年、95年、2001年、07年とこれまでに4回報告書を出しており、各国政府が推薦して選ばれた科学者らが、発表された論文を調査・評価し、報告書の草稿(ドラフト)案を作りあげていく。

 そのプロセスの大まかな流れを見てみると−。


 (1)作業部会の各章ごとに執筆者を選出

 (2)執筆者が作成した報告書案について、各国政府の査読者、専門家査読者がコメント

 (3)査読編集者が執筆者がコメントに対応したかどうかチェック

 (4)政府のための要約版を総会で採択


 誤りや偏りを減らすために査読に次ぐ査読が行われる。まず、報告書を作るにあたり、元になる論文は原則として、査読を受けた研究論文となる。第4次報告書では2000人を超す研究者や政府関係者がかかわってコメント(意見)がつけられ、そのコメントに作成者がきちんと対応したかについてもチェックされる。そして政策者向けの要約版を総会で採択するという最終プロセスに入る。

 しかし、緻密(ちみつ)なプロセスを経ながらも、報告書のミスを防ぐことはできなかった。

 第4次報告書へのコメントは3万件にのぼったという。ヒマラヤの氷河の記述についても、その元になるデータについて疑問視する指摘があったという。誤りを正す機会はあったわけだが、結果的にこの機会は生かされなかった。

 「現在、5次報告書作成に向けて執筆者の選定とプロセスが進んでおり、プロセス自体に問題があったのであれば、それを正す必要がある。再発防止に努めなければならない」と日本人唯一のIPCCのタスクフォース議長である平石尹彦氏は指摘する。

 ■“グレー文献”の問題点

 グレー(灰色)と呼ばれる文献の取り扱いについても、クローズアップされることになった。

 ヒマラヤの氷河消滅の記述の元になった文献は、ジャーナルとして査読されたものではなかった。このような文献は「グレーペーパー」と呼ばれる。

 しかし、途上国の温暖化の影響についての論文は極めて少なく、こうした文献を排除することは逆に偏りを生むことになりかねない。政府の調査報告書や学会での発表なども、このグレーペーパーだ。

 グレー文献だからすべて信頼性が低いというわけではないのだが、どこまで引用して報告書にまとめていくのか、問題提起することになった。

 ■コミュニケーション不足

 IPCCの報告書にかかわる科学者たちは無報酬だ。日本の場合、会議への参加は国家公務員の出張規定に準じて、日当と交通費が出るが、報告書をまとめたり、チェックしたりといった役割を担うのに費やす時間労力に金銭の対価はない。

 「本業以外に相当の負担労力がかかるわけだから、当初はIPCCの報告書の執筆者になりたいという科学者は少なかったが、今や肩書の一つになってしまっている」と、苦言を呈するのは、当初からIPCCに深くかかわってきた地球環境産業技術研究機構副理事長の茅陽一氏だ。

 第4次報告書が出された07年、IPCCはゴア前米副大統領とともにノーベル平和賞を共同受賞した。温暖化問題は、国の安全保障問題の一つに格上げされ、IPCCの報告書からの引用ということが金科玉条のように使われていった。

 「パチャウリ議長の個人としての発言がIPCCの考えのように引用され、広がり、誤解を生んだ点も否定できない」と茅氏は指摘する。

 IPCCの報告書の本来の目的は政策の提言ではないのだが、そういった様相を帯びていき、このことが逆に不信感を呼んでしまった。政治的に利用された格好だ。

 ただ、こうした課題は残るにしても、報告書すべてを否定するのは拙速すぎる。今回、IACの検証委員会の委員として選ばれたマレーシア首相上級顧問のハミド・ザクリ氏は「IPCCの報告書が科学的に問題があったのではなく、コミュニケーションの仕方に問題があった」と指摘する。

 今年秋までに検証委員会のリポートが公表されるが、IPCCの信頼をどう回復するのかが問われている。(杉浦美香・社会部環境省担当)

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